『 スリーピー・ホロウ 』

Sleepy Hollow (1999) U.S.A. 1hr. 51min.



ティム・バートン監督「Mars Attacks!」以来3年ぶりの新作は、アメリカン・クラシックであるワシントン・アービングの小説「The Legend of Sleepy Hollow」をジョニー・デップ主演で映像化したホラー・タッチのファンタジー。

1799年ニューヨーク市、クレイン捜査官(ジョニー・デップ)は進歩的な科学捜査を主張して警察当局内部で煙たがられていた。 そんなに科学が万能なら、と、クレインはニューヨーク州の郊外スリーピー・ハーロウ地域で人々を恐怖に陥れていた連続首無し殺人の捜査に派遣される。

村に到着したクレインは、長老に呼ばれ、殺人事件は、首の無い騎士が馬に乗って現われては、何人もの首を切り落としその首を持ち去るという「首無し騎士(Headless Horseman)」の亡霊によるものだと聞かされる。 首の無い騎士の存在など全く信じないクレインは、自作の科学機器を駆使して調査を進めるが、村の人々は非協力的なだけでなく怪しげでもある。 そんなある日、とうとう、自分がその首無し騎士と遭遇、目の前で切り落とされた首が転がる様を目撃してしまう。 スピリットの存在を信じざるを得ないものの「科学的」にスーパーナチュラルな事態を分析して事件解明に努める。



バートン監督のファンタジーでデップ主演といえば、期待が高まらざるを得ない。 最初のタイトルから、もう映像美にうっとり。 重い霧の中の木立・・・にこにこする場面ではないのだけれど、「あぁ、バートンの世界」と思うとわくわくして期待に胸がおどり目が輝いてしまうのだ。 事件の導入部にはマーチン・ランドー(Ed Woodでアカデミー賞受賞)が出てくるのだからたまらない。 そして、かのクリストファー・リーも登場。台詞はうなり声だけというクリストファー・ウォーケンも素晴らしい。
18世紀アメリカの映像は期待を裏切ることの無いバートン的美しさに満ちているし、また、話もきっちりと良くまとまっている。 だけれど、なんか、きっちりと出来すぎているなという感覚を否めない。 バートン監督の作品に繰り返し描かれる異形であるが故の切なさ、悲しさ、といったものが今回は影を潜めているからなのだろう。 映像的には、とってもバートンなので安心して見ていられるけれど、観終わったあと心の中にいつまでも残る甘く悲しいときめきといったものを感じる事がなかった。

人里はなれた丘に建つ石造りの邸宅、湿った夜霧、墓地、などバートン監督定番の背景に加え、今回は、風車が焼け落ちるシーンがひさびさに登場。 もちろんフランケン・ウィニーの時からの彼のお気に入り。 15年間の映画撮影技術の進歩は、さみしい山の上の風車が崩れ落ちるシーンの美しさを倍増させていた。 でも、インパクトは少な目になった様に感じた。それを円熟したと解釈するか、表現方法が鋭敏でなくなったと解釈するのか。

ジョニー・デップの一風変わった捜査官という役どころは最近の数作品の中ではやはり一番ぴったりくる。 他の出演者は、クリスティーナ・リッチ(アダムス・ファミリー、Fear and Loathing in Las Vegas)、リサ・マリー、ミランダ・リチャードソンなど。 音楽は勿論ダニー・エルフマン。

コミカルなタッチもある本作品、バートン・カラーはちょと控えめながら、ゴシック的な美しさ、謎解きの面白さと、映画としては極めてよく出来ていて、話が終わりエンドクレジットになったところで劇場内のあちこちから拍手があった。 (02/05/00)

dir: Tim Burton


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