『 レッド・プラネット 』

Red Planet (2000) U.S.A. 1hr. 46min.



2050年、環境破壊が進んだ地球は人類が住める状態ではなくなってしまった。 そこで、新たな移住先として選ばれたのが火星。 世界各国から集められた科学者チームにより火星の気温を上げて極地の氷を溶かして水をつくり、無人宇宙船により地球から運んだ特別な藻を繁殖させて光合成により酸素を作り出し火星の環境を地球人が住めるものに作り変えるという、火星の地球化が進められていた。

計画は順調に進んでいたが突然、火星の酸素の量が減少しだし更に観測値が送信されなくなってしまった。 そこで、有人宇宙船 MARS ONE を送り原因究明及び火星の環境整備プロジェクトを進捗することとなった。

120億の人類の将来を担う乗組員は、ギャラガ− (ヴァル・キルマ−) ほかの宇宙飛行士及び科学者からなり、ボーマン (キャリー=アン・モス)を船長とするチームだ。

火星への約6ヶ月の飛行が終わりに近づき目的地まであと少しというところで、太陽フレアの放射線によって宇宙船は大きなダメージを受けてしまう。 ボーマン船長だけが宇宙船に残り、他の乗組員5名は直ちに母船から着陸機に乗り移り火星に向かった。 初めて火星に降りた人類となった5人だが、着陸のショックで母船との通信設備の機能を失ってしまい前途多難さがうかがえるスタートとなった。 それでも任務を遂行し、目的地にたどり着いたクルーの目の前に現れたのは、竜巻で壊滅的に破壊されてしまっていた無人基地であった。 酸素の観測値の送信が途絶えた理由は明確になったが、 ギャラガーの活動を助けるはずだったロボットの AMEE (エミー:Autonomous Mapping Evaluation and Evasion = 自主的マッピング探査&回避) のプログラム・モードが探査モードから戦闘モードに切り替わってしまいクルーを攻撃しだすし、地球から移植した藻以外の生命体の存在、酸性雨を伴う嵐との遭遇、と 彼らを取り巻く状況は悪化するばかりだ。

母船に残った船長はヒューストンと連絡を取りながら地上クルーの救出に尽力する。 クルーは無事生還できるのか、また、人類の未来は・・・

自分たちの星を壊してしまったので他所(火星)を勝手に作り変えて移住しようという身勝手さはさておき、地球から最も近い赤い星を題材にした最近の一連の映画の中では映像は及第点以上、ストーリーはだるい、といった位置付け。

ナレーションで映画がはじまるというスタイルには驚かされた。 いくらなんでも、タイトルバックからナレーションはないだろうに、と思う。 映像とせめて文字としてほしい。この、お手軽さ感覚は最後まで続く。

宇宙航海や宇宙船内部のシーンはそれなりに美しく作られているのだが、アップになったヘルメットのペイントのずれなど荒っぽさが目に付いた。 この荒っぽさは物語の展開にも表れていて、セグメント毎のつながりが丁寧に扱われていないので、夫々の出来事の必然性が不明確になっている。 次から次へと危機に見舞われるクルー達、しかし観る側には危機感が全く伝わってこない。 サバイバルしていく乗組員たちに何が待ち受けているのか、ストーリーがどうなるかというわくわくした感覚も無い。 SF映像の美しさにひたる事に徹すれば楽しめるが、それ以上のインパクトは無く、せっかくの面白い題材を凡作にしてしまっていて惜しい。
いままでに多くのコマーシャルを手がけてきたというAntony Hoffman 監督の、第一作目となる映画。

dir: Antony Hoffman

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