『 マイ・ドッグ・スキップ 』

My dog Skip  (2000) U.S.A. 1hr. 35min.



少年ウィリーの 9歳の誕生日、子犬が家にやってきた。 子犬のスキップは少年の無二の親友となり、それまで内気だった少年の人生は大きく変わっていく。 ウイリー・モリスが自身の少年時代の実話に基づいて書いたベストセラー小説の映画化。

舞台は1942年、第二次大戦下のミシシッピー州の静かな田舎町。 ウイリーは、ひたすら明るく活動的な母親(ダイアン・レイン)、スペインの独立戦争で片足を失い心の一部もちょっと失ったのかもしれない父親(ケビン・ベーコン)との間に生まれた一人っ子。 大人しく内気なウィリーは一緒に遊ぶ友達もいない所謂いじめられっ子だった。 9歳の誕生日、母親からのプレゼントは可愛いテリヤの子犬だった。この日を境にウィリーの人生は少しずつ変わっていくのであった。

仲良しだった隣家に住むスポーツ万能のお兄さんディンク(ルーク・ウイルソン)が出征してしまってからは、スキップだけが友達だった。 ウィリーとスキップはいつも何処に行くのも一緒だった。 その人懐っこさであっという間に町中の人気者になったスキップのおかげなのか、ウィリーにもいつのまにか友達やガールフレンドが出来るようになった。

映画はスキップがやってきてから約一年間のウイリーとの交流が描かれている。 人の心をライトアップするスキップのおかげでウィリーが大きく成長できただけでなく、いつのまにか父親も明るさを取りもどしていく。 犬の 1年は人間の 7年に相当するという。来たとき子犬だったスキップはみるみる成長していく。 スキップが子犬から成犬になるというプロセスを見せることで時の流れを表現しており映画が自然に心の中に入って来る事が出来る理由のひとつになっている。 子供と子犬の友情、愛情のほかにも映画に盛り込まれたものは多い。

反戦は、かなりクリアーなメッセージとして表現されている。戦地で勇敢に戦う兵士たちのモノクロ映画を見て愛国心ムードで盛り上がる田舎の町だが、実際に戦争に行ってきた人は、戦争の悲惨さを知ってしまう。 しかし、まだ当時は反戦を唱えることは無く戦争に疑問を持つ者はむしろ孤独感にさいなまされる。

子供たちにとり戦争で勲章を貰うことほど素晴らしいものはない。ウィリーが父親に「足を無くなしてしまったけれど、メダルもらえたのでしょ」と無邪気に尋ねると「脚があったほうがメダルなんかよりずっと良い(I'd rather have a leg)」というところにも強い反戦メッセージを感じた。

まだ、黒人の人権運動が起きる前の時代が舞台であり、白人とは居住区も乗るバスも違う "おとなしい黒人たち" が登場し、人種差別については、さりげなく織り込まれている。 全米各地で蜂起がおきるのはそれから20年以上たってからなのだから。

第二次大戦時代のアメリカの田舎町の素朴な人々の暮らし振りや、当時の子供たちの遊びなど、も極めて自然に再現されていてあたかも自分の過去を思い出しながら映画を見ているような気分にさせられてしまう。

この映画は、子供と動物の交流モノというだけなのだが、どうしてこんなに深く感動するのかというと、やはり脚本が良いのだろう。 人物描写がすばらしい。

そして主役のスキップの存在。あっという間に家に、そして町じゅうに溶け込み皆から愛される存在のスキップは希望の象徴でもあり、また、誰の心にもある二度と帰らないたのしかった過去のひと時の象徴でもあるのだ。 今迄に観た映画で一番泣いてしまった。

dir: Jay Russell
(08/31/00)

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