『 夜になるまえに 』Before Night Falls (2000) USA 2hr. 10min. |
カストロ政権下のキューバから米国に亡命した作家レイナルド・アレナスの自伝的小説「Before Night Falls」の映画化。
◇ 1943年、キューバの貧しい村で生まれたレイナルド(ハビエル・バルデム)は子供の頃から豊かな感受性を詩で表現する能力に秀でていた。 ティーンになり、革命活動(時の独裁者Fulgencio Batistaに対して)へ参加した事から革命政権成立後のカストロによる政府の教育プログラムの一環としてハバナ大学で学べる事になった。 20歳の時に彼は最初の小説を書き出版された。しかし、それは、彼にとって母国で出版されたただ一冊の書籍となった。 なぜなら共産党政府による思想統制が盛んになり、自由な表現がパブリッシュされる事はなくなったからだった。 そして芸術家やホモセクシュアルは強制収容所に集められ暴力的な制裁が加え始められた。彼の二冊目の小説はキューバからフランスに帰る友人にこっそりと託されフランスで出版され、最優秀外国文学賞を受賞する。 しかし、その密輸がキューバ政府の知るところとなりレイナルドは要注意者として政府と警察からマークされる事になる。 そんな時に、レイナルドは二人の少年への性的暴行という無実の罪で逮捕される。一旦は脱走に成功するも結局は再度捉えられ投獄される。 二年後に出獄した時の条件は、過去の作品における表現は誤りであった、また、ホモセクシュアルについては、性的オリエンテーションを改めたと宣誓書を書き記すものであった。 1980年、カストロは同性愛者、精神的に病んでいる人々、及び、一部の犯罪者たちを国外追放とした。 12万5千人のキューバ難民が発生した所謂マリエル事件である。レイナルドはこの時に船に乗りニューヨークに到着し亡命作家となった。 ニューヨークでの彼は1990年にAIDS関係で死ぬまでの間に小説を10点、ほかに多くの詩やエッセイ、ショート・ストーリーなどを残した。 死ぬ前の病気で弱った体でも最後まで書きつづけたのは全体主義に対する怒りが彼の執筆活動のエネルギーとなったからであろう。 ◇ ホモセクシュアルで且つライターである為に政府から弾圧を受けつづけた作家の人生だが、政治的メッセージは特に強調はされていない。 映像は明るい太陽、海、風が美しくリリカルで絵画の様な画面だ。だからこそ独裁的な政府の暴力や全体主義の恐怖も実感をもって観るものに訴えてくる。 映画化したのはジュリアン・シュナーベル。『バスキア』に次ぐニ作目となる。前作のときは、いわば身内の出来事を映像表現したという感じだったが今回は本格的な映画作品となっている。 主演のハビエル・バルデムはこの作品でオスカーにノミネートされた。彼にとってもシュナーベルにとっても代表作となるのではないかと思える主な出演者 Javier Bardem・・・Reinaldo Arenas Olivier Martinez・・・Lazaro Gomez Carilles Johnny Depp・・・Bon Bon(ドラッグ・クィーン) / Lietenant Victor(キューバ軍大佐) dir: Julian Schnabel (21JUL01)
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