D I A R Y - J u n e 1999
june 2 99 tuesday
不倫の相手
最高気温が摂氏30度を越えるという、ほんとうに暑い日々が続いている。それも朝から摂氏23度なんていうのだから疲れる。 朝の出勤でスーツの上着を脱いで手に持っている人を見かける。普段のニューヨークではお目にかかれない風景なのだ。
6月1日はマリリン・モンローの誕生日。 没後37年経っても彼女の人気は衰えることが無く、昨日は彼女の想い出にひたる会があちこちで開かれた様だ。 そんな場所で、某ベテラン・ジャーナリストが呟いたという。
「天下の大統領の不倫相手と言えば、昔は絶世の美女に限られていたのに・・・」
june 5 99 saturday
天安門から10年
今週は月曜日がメモリアル・ディの休日だったので一週間が早かった。 以前からわたしが力説している週休3日制が導入されれば毎週こういう感じで時が経過するのだろうに。
一週間ほど続いた熱帯のような暑さが去り、今日は最高気温が26度と過ごしやすい。
夜、何年ぶりかで『ラピッド・ファイアー』を観る。 ブランドン・リー完全主演としては最後の作品。 ブランドンのアクション・シーンには父親のような歯切れの良さというか見栄を切るといったところが無くそこがリアリスティック。 香港マフィアとイタリアン・マフィアの争いだが、中国の自由の為のデモのシーンも少々。 そういえば、昨日で天安門から10年経ったのだ。 ブランドンの死、天安門で死んでいった闘士の死、そして中国の民主主義の行方が妙にオーバーラップする。
june 7 99 monday
東西逆転、今後の予測
ニューヨークは記録的な暑さ。日中の最高気温は摂氏36度。残業をして夜 9時頃帰宅途中にある電光掲示板式の温度計を見たら、30度。 ニューヨークはこういった果てしも無いような暑い日が一夏(ひとなつ)に何日かあるのだ。 帰宅してすぐにAC(エアコン)をオン、フル回転。3時間ほどで室温は25度にまで下がり安眠が確保できそうだ。
今、米国ではニューヨークとロス・アンジェルスで気候の逆転現象が起きていて、NYは前述したような猛暑。 一方、本来暑い筈のLAでは、西海岸の青い空と陽光に照らされる都市のイメージとはうらはらに、摂氏10度〜15度くらいの気温が続き、場所によっては雪がのこっていたりするとの事。
これらの気象は、ラ・ニーニャ現象の影響と説明されている。ラ・ニーニャとは、赤道下、日付け変更線あたりから南米沿岸付近にいたるまでの太平洋海域において海面水温が平年より低くなる現象を言い、逆に高くなる現象がエル・ニーニョと呼ばれる。
エル・ニーニョやラ・ニーニャについて、それがまるで天変地異の前触れであるような解説表現があるが、このどちらかになることは数年おきに繰り返されており、そういう意味では一般的な環境現象なのだそうで、いたずらに危機感を煽っているような気がする。 ちょっと平均値より暑い日が続いたり寒かったりすると、いよいよ環境異常で、ついでにオゾンホールからは宇宙線が降り注ぐ様な印象を受ける報道も目にする。 しかし、地球の歴史からいうと、現在は最も気候が安定している時期なのだそうだ。 ただ、人間は地球上の他の生命体に比べて極めてひ弱である為に僅かな気象的変動にも敏感に反応せざるをえないのだ。 地球自身の自然のサイクルでの氷河期はまだ先かもしれないが、自然サイクルを破壊する可能性を持つ人類がこれだけはびこっているという時代も地球が始まって以来始めてであり、今後の予想は過去のデータでは計り知れないのだ。
june 9 99 wednesday
ビデオ・デッキごとレンタルビデオテープを返却
これはわたしの経験談ではなくて、会社の人に実際に起こったハナシです。
その人は映画が好きでよくレンタル・ビデオをするんだけれど、ある時に映画を観終わって巻戻そうとしたらテープがデッキの中にからんじゃってにっちもさっちも行かなくなった。 まだ、レンタル・ビデオ店が開いている時間だったので電話して状況を説明したら、デッキごと持ってくるようにとの事。 仕方ないので夜、ブロックバスター(大きなレンタル・ビデオ店)までデッキごとテープを持って行ったけど、結局、ビデオ店の店員も取り出すことが出来ない。
「これはメーカーに送るより手が無いです」
ということで、即座にデッキはビデオ店経由メーカーに送られたのだった。 そして約2週間ほど経った昨日、無事デッキがブロックバスター経由で戻って来たのだが、「なんだか前より調子が良くなっちゃったんで、買い換えようかとおもっていたのだけどもう少し使うことにした。」そうだ。
ビデオの弁償代やデッキのサービス代金などはすべて無料だったそうです。
june 11 99 friday
音楽のネット配信
インターネット小売り大手の米アマゾン・ドット・コムは、同社のサイト経由で音楽を無料配信するサービスを開始した。
" FREE! Digital Downloads " とした画面で人気アーティストの曲が20曲以上用意されており、PCに取り込むことが出来る。 圧縮方式は、MP3とリクィッド・ オーディオ方式の2種類が採用され、後者の場合、平均的楽曲は、56Kモデムの場合で 7〜8分で落とせる。 当面は無料サービスの提供でサイトへの来訪者数を増やし音楽CDなどの販売促進につなげる方針の様だが、著作権の問題などが解決され環境が整い次第、有料配信に踏み切る可能性が高い。
CDなどの音楽ソースを個人ベースで自宅保有という必要性が無くなる日も近い。いよいよわたしが夢見ていた時代の到来なのだ。興奮します。 わたしにとり個人所有のメディアは、音楽ならCD、映画なら VHSが最後となるのだ。DVDやMDに手を出さない理由は、次世代メディアはオン・デマンドによる配信だと確信していたからなのだ。 一ヶ月単位で設定した固定制使用料を払うことにより、ユーザは聴きたい時に、或いは観たいときに好みのソースをリストから選んでクリックすることにより何回でも自宅で音楽や映像を楽しめるというサービスの開始が待ちきれない気分である。
june 16 99 wednesday
引越し
懸念の引越しが無事終了した。今回は、同じビルの3階上への引越しで実質は10メートル程度の垂直移動であった。 10メートルでも引越しは引越しであり体力を消耗する。 特に今回は、リースではなくて購入したアパートだったので、こうやって部屋でくつろぐまでには長い道程があったのだ。
時系列的に簡単に書き出してみると:
【 購入まで 】
- 不動産ブローカーに希望(物件の場所、広さ、価格レンジ、他)を伝え、リストアップされたものを見て歩く。
- 気に入った物件が見つかり、価格のネゴシエーション。
- ビッド、オファーが繰り返され、双方歩み寄った点にてコミット成立。手付金支払。
- 弁護士を決める。
- モーゲージ(住宅ローン)を申請する。銀行に山の様な書類を提出する。
- 物件に保険をかける。
- 銀行の審査に2〜3ヶ月
- モーゲージが承認される。
- クロージング。売り手の弁護士、買い手(わたし)の弁護士、売り手と買い手の銀行からの担当者、そして売り手とわたしとが売り手の弁護士の事務所に集まり、小切手やら証書やらの交換会を行う。 アパートの所有権がわたしに移り、かつ、わたしが借金を負った瞬間である。不動産ブローカーへの手数料(通常は物件の価格の6%)は売り手の負担。
【 引越し 】
等が正しいタイミングでなされないといけない。更に、会社には事前に休暇の申請もしておかなければならない。
- 電話の接続手配(& 旧居の電話中止)。
- 電気の接続手配(& 旧居の電気中止)。
- ケーブルTVの手配(マンハッタンは高層ビルが多く地上波の受信は出来ない)。
- 住所変更は、銀行、クレジットカード、保険会社、ISP、新聞、など。 郵便局には、旧居あての郵便物の新居への転送手配。最低一年間は転送される。
- さらに、新居の工事の手配(ペンキ屋、掃除業者、錠変更、窓のブラインド設置、他)。
- そして、勿論引越し屋さんの手配〜当日の移動。
そして、今回の場合、掃除業者が約一週間遅れた以外は、ほぼ順調に進んだのであった。 電話はちゃんと即日旧居から新居に転送されたし、新聞もちゃんと今日から新居のドアの前に配達された。 この国において奇跡的ともいえることで、なんだか気味が悪いほどである。 もっとも、過去13年間に6回、特に直近では3年間に実に3回の引越しをしたものだから、手際も良くなる訳だ。
引越しは、疲れるし、なにより不経済はなはだしい。 もう、引越しは当分しなくて良いのだと思うと安堵で眠くなってしまう。
june 18 99 friday
さらば雨漏りスニーカー
10年以上愛用していた「Keds」のスニーカーズ、大分へたってきたが、足にすっかり馴染み薄汚さに目をつぶればまだまだ現役で、と思っていた。 ところが、先日、雨の日に履いて外出した処、片足だけソックスがじめじめ状態になり気持ち悪いったら無い。ソールのどこかに穴が開いてしまったらしくて雨漏りがするのだ。 仕方ないので新調しようとしたが、出不精で買物大嫌いなわたしは何処に行ったら、「Keds」のスニーカーズが買えるのか分からない。 「Nike」のエアー・マックスの様な今風のカタチならあちこちで見かける普通のスポーツ用品店で求めることが出来るが、「Keds」はデッキシューズの様な形をしていて、今主流のハイテク型スニーカーシューズとは似ても似つかないものなのだ。
知り合い何人かに尋ね、ここならあるかもしれない、と言われた場所へ行ってみることにした。 印度料理店での食事会からの帰路フィフスアベニュー添いに歩いて行くと、目的地の少し手前に大きなスポーツ用品店があった。 入ってみたら、すぐに「Keds」があり、わたしの愛用モデルと同じシューズもしっかり棚にある。 ささっと寄ってきた店員に自分のサイズを告げる。ところが、奥に入った店員はなかなか戻って来ない。サイズ切れかしら、と少し心配になる。 しかし、心配は無用であった。彼の持ってきた「6M」はぴったり。 その痩せた中年男の店員は強い東欧アクセントで、「このサイズはもうラストペアなのだが、実はこれ、脇のところが少し黄色くなってるでしょ、ほら。でもこれはグルー(糊)だから、何でもない。オッケー?」 などと言う。もちろん、糊がはみ出ていたって一向に差し支えない。「OK、全然問題ないよ。」とわたし。 さすが新品のスニーカーはやたら白い。
そういう訳で雨の日が待ち遠しいわたしなのだ。
june 24 99 thursday
ラスト・ヘアカット
少し前にいつものヘアスタイリストから6月いっぱいで退職との知らせが届いた。 帰国することになったとの事。
前回のカットが特に良くて、まだヘアカットは不要なのだが、今月一杯とのことゆえ今日ラストカットに行った。 癖毛のわたしは下手な人に切られるとまったく収拾のつかないヘアになってしまうのだが、このスタイリストはわたしの癖毛をよく理解して上手にカットしてくれる。 そして、彼は、人格的にも、押し付けがましいところが無く、他のスタイリストの様に会話の相手をしてやる必要も無く、一言も会話をしないでも済む気安さがある。 ほんとうに残念だ。
帰国後の彼は、オートバイで日本一周をし、最終的には海と山のある場所に定住予定とのこと。 自給自足が目標だが、現金が必要な場合は近所の住人のヘアカットをして暮らすと言う計画。 手に職のある人は、居住地の自由や人生の選択肢に幅があり羨ましい限りだ。
わたしもかつてライダーだった為にオートバイの話に花が咲く。 いつものカットが終わる。ラストだからか、今日のカットはまた特別に素晴らしかった。
さて、残されたわたしにとり、一ヶ月後には新たなスタイリストによるヘアカットが待っている。 ヘアスタイリストに求められるのは技術も勿論大切だが、相性というものも重要なのだ。 毎月行く場所だから、感じ悪さを感じる相手では続かないのだ。どういう出逢いとなるのだろうか。
june 30 99 wednesday
日曜日の予行演習
最近、毎晩といって良いほど暗くなるとくぐもった様な音が聞こえてくる。 引越した当初は興味を持ったが、最近は「またか」と思う程度だ。 普段の夜も、たまにはあることだが、最近の様に毎晩という事はない。 どうやら日曜日の予行演習らしい。
7月4日はアメリカ独立記念日。昼はバーベキューやピクニック、夜は花火が定番なのだ。 特に有名なのはイーストリバーの花火大会でテレビでも中継される。 その他にも、あちこちの川や海で打ち上げ花火が打ち上げられる。 わたしの住まいはウエストにあるのでイーストリバーの花火は部屋からみることは出来ないが、ハドソン川での花火は窓から見ることが出来る。 最近は連日のように9時過ぎになると遠くから「どぉーん」という音が聞こえるので窓に目をやると河口のあたりで赤や緑や黄色の花火が上げられている。
光の進む速度と音速が違うので画像と音がずれて部屋にやってくる。
美しい光の花が空に開き、そのひとつづつの光の粒が落下し始める頃に「どぉぉーん」と聞こえてくる。 ライブで観ている実感がわかない。音だけ遅いモデムでストリーム配信がされている感じだ。
花火の終わった後の片づけはどうなっているのだろうか、花火を見る都度思うことだ。 水際や船上で打ち上げることが多いが、かけらは水面に落下するに違いないのだが・・・