『バイス』

Vice (2018)  USA 2hr12min.



アメリカ史上最強の副大統領と言われているディック・チェイニーの半生を描いたコメディー・タッチの政治風刺映画。

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アメリカ史上もっともパワーを持ったと言われているるVice President ディック・チェイニーの半生を描いたものだが、それに加えて911テロとその後イラク攻撃を行い、アメリカが世界一のテロリスト国家となった経緯が政治の裏側として描かれ実に面白い。

ディック・チェイニーはアルコール問題がありせっかく入学したイエール大学を数ヶ月で退学になり、故郷に戻り送電設備の仕事についていたが、そこでも酒浸りで飲酒運転で捕まってしまい、以降もアルコール問題を繰り返す。当時のガールフレンド(後に妻となる)Lynn(大学の成績全てAという優等生)は、ここで心を入れかえないのであれば、自分は去る、とディックに最後通告する。Lynnに捨てられたくなかったディックは一念発起しワシントンDCでインターンシップのポジションを得る。それは当時上院議員だったドン・ラムズフェルドのオフィスだった。そこでチェイニーは彼の才能が何かを見出した。それは人を操り、調整し、意のままに出来事を動かし、権力を得るという分野であった。

それからのチェイニーは、大統領の法律顧問、首席補佐官を務めたのち、下院議員に立候補し6期つとめる。ジョージ H. W. ブッシュ(パパ・ブッシュ)のもと国防長官をつとめ湾岸戦争を主導した。 その後、一旦は政界から身を引き財界でハリバートンの経営に携わり巨万の富を得ている。
このまま政界とは距離をおいていれば世界は平和だったのだろうに、そうはいかなかった。

子ブッシュが大統領選に出馬することになり、そのときに、Dubya(子ブッシュ)から彼のVice President(副大統領)になってほしいと頼まれる。古典的な副大統領としての立ち位置ではなく独自の政策判断を行うポジションとして子ブッシュのランニング・メイトとなり、そして子ブッシュはゴア候補を下し「当選」し第43代米国大統領となった。 ほどなくして起こった同時多発テロ("911")では、実質的にはブッシュ大統領ではなくてチェイニーが危機対応にあたり、米国がイラク戦争を起こすよう誘導していく・・・

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絵に描いたような悪徳(Vice)政治家となったチェイニーは、釣りや狩りが趣味というのも政治スタンスとぴったりシンクロする。副大統領(Vide President)として大統領を、そして米国を操っていたと思われるが、しかし、そのチェイニーを操っているフォースがあることを映画は示唆していた。それは、リン・チェイニー。頭脳明晰で有能で権力志向の強い彼女は自分が政治の表舞台に出ることなく代わりに夫を最強の政治家へと変貌させたようにみえる。

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Dubya(子ブッシュ)、ラムスフェルド、コンディー・ライス、コリン・パウエルなどが実に雰囲気そっくりに扮した俳優により演じられていたのは面白かった。子ブッシュのあっけらかんとした様子はまるで本人かそれ以上。ここらへんは、「Saturday Night Live」出身の監督 Adam McKay らしさ。チェイニーも子ブッシュも生存中だというのに、これだけ暴いた(子ブッシュについては任期中から言われ続けた内容だが)内容を映画化したというのも興味深い。最後に「これはリベラルな視点だから」というディスカッション場面を挿入している。つまりリベラルな立場で見た風刺映画だというステートメント。その意味は、チェイニーの敷いた悪徳路線はみゃくみゃくと生きているので、リベラルな政権を取り返さなければ、ということになる。

エンドロールはフライフィッシングのルアーが次から次にと出てくるのだが、よく見ると、映画のテーマをアレンジしたものとなっていて非常に凝った作りで興味深いが、多くの観客が立って出て行ってしまったのには驚いた。

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  主な出演者:

Christian Bale ... Dick Cheney
Amy Adams ... Lynne Cheney
Steve Carell ... Donald Rumsfeld
Sam Rockwell ... George W. Bush
Alison Pill ... Mary Cheney
LisaGay Hamilton ... Condoleezza Rice
Tyler Perry ... Colin Powell

Director: Adam McKay


(13APR19)


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